
2011 年11 月
今年の夏、会計監査業界において、衝撃的なニュースリリースが相次ぎました。
2011年7月:監査法人トーマツが公認会計士などを対象に440人の早期退職希望者を募集
2011年8月:あずさ監査法人がアドバイザリー部門で約50人の早期退職希望者を募集
これらの動きに先駆けて、2010年夏には新日本監査法人が400人の早期希望退職の募集をするという報道は記憶に新しいところです。
一方、8月25日の日本経済新聞社電子版の報道では、2011年3月期決算の「内部統制報告書」において、「内部統制が有効に機能していない」などとした企業は8社で、昨年の22社(意見修正分も含めると29社)から14社(同21社)も減ったとのこと。
確かに、2009年3月期からの3期分の実績を見ると、内部統制を「有効でない」とした企業数は、62社(2009/3期)→29社(2010/3期)→8社(2011/3期)と減少傾向は顕著であり、この数字を見る限り、大手監査法人が早期希望退職募集の引き金を引いた一因は、内部統制に関するコンサルティングニーズの一巡・低迷であるという理由付けは容易に理解できるものです。2006年に金融商品取引法が成立して以降、我々経営コンサルティングファームも会計監査法人も様々な支援をクライアント企業に対して提供してきましたが、その役割は終わりつつあるということなのでしょうか。いわゆる、J-SOXの導入により、日本の企業の内部統制上のリスクはとても低くなったということなのでしょうか。内部統制は単なる「コスト」であり、ひたすら効率化を追求する対象なのでしょうか。
内部統制に関するコンサルティングや分析を行う株式会社レコシコム・レキシコム総合研究所が2011年7月1日に発表した2011年3月決算企業の「内部統制報告書」の分析結果を速報していますが、これに興味深い分析結果が掲載されています。
重要な欠陥を識別した企業において、例えば全社的な内部統制上の重要な欠陥数は、22(2009/3期)→12(2010/3期)→3(2011/3期)と激減しているように見えますが、そのうち「不正に該当するもの」を見ると、7→7→3と数は減ったものの、不正に該当するものの割合はむしろ上昇しています。決算・財務報告プロセスに関してはもっと顕著で、重要な欠陥数は、41(2009/3期)→18(2010/3期)→7(2011/3期)と数こそ減らしていますが、同様に「不正に該当するもの」に着目すると、2→3→3とその数は全く減っていないことがわかります。
内部統制報告書において自社の財務報告に係る内部統制が「有効である」と宣言するまでに、その裏では業務現場での多くの「不正の温床」や「ヒヤリ・ハット」が存在し、また内部統制評価に関する社内関係部署や監査法人との多くの交渉事や打合せが存在することは、内部統制関連の実務に携わったことがある方であればご存知だと思います。つまり、内部統制報告書で内部統制を「有効」とした2011年3月期決算企業2,557社の全てが、年度を通じて内部統制システム上全く何の問題や不備、課題もなく「完全なる無事故・無違反」だったということは考えられないでしょう。
少し古い調査結果ですが、2009年2月にディーバが発表した調査結果で、44%の企業が『内部統制が企業価値向上へ寄与していない』と感じているという分析結果の発表がありました。これは恐らく、「金商法対応としての」という枕詞を付けて理解すべきことであり、真の意味の内部統制が企業価値の維持や向上に寄与しないと考える企業経営者はいないと思います。
実際、我々のクライアントの中には、「制度対応としての内部統制から企業文化としての内部統制」にその舵を大きく切っている企業が存在します。その企業においては、社内の内部統制に対する「やらされ感」や「押し付けられ感」を払拭し、企業文化として定着した内部統制を如何に構築するかを真剣に議論しています。恐らく、その企業の経営トップや内部統制推進リーダーは、企業文化として定着した内部統制こそが不正や誤謬を防止し、誇り高き強い集団を作るということに気づいたからだと思います。内部統制を、法制度上の単なる手続きと位置付けるのではなく、企業価値を永続的に維持・向上させるための不可欠な経営基盤として位置付けることが重要でしょう。
実はここまでをまだ厳しい暑さが残る9月前半に書き終えていました。そして2011年晩秋、オリンパスの問題が発覚しました。コーポレートガバナンスの欠如、内部統制の不備、杜撰な監査・・・このように断罪する風潮が高まっています。もちろん、それも原因の一部でしょう。しかし、最も重視しないといけない企業経営上の真髄は、「営業部門は正々堂々と利潤を追求し目標を達成する」「経理部門は会社として発表する決算数字に強いこだわりと責任感を持つ」「経営トップは正しく企業の実態をステークホルダーに伝える」という企業文化とプライドです。今回のオリンパス問題を契機に、ただ単純に規制や業務上のコントロールを強化するという方向に議論が進むとすると、日本の企業の競争力を弱体化させる結果になるので危惧しています。
アビームコンサルティングは、内部統制構築・評価のトップ・コンサルティング・ファームです。制度対応としての内部統制の整備・評価が一巡した今こそ、これまでの評価方向や進め方、体制を見直してみては如何でしょうか。我々は多くのクライアント企業に対して、「効率的」かつ「効果的」な内部統制の実現をサポートしてきました。貴社の内部統制もまだまだ良くなる余地があるはずです。同じやるなら、意義深い内部統制対応をしましょう。我々の支援内容にご興味がございましたら、是非ご連絡下さい。