株式会社トミー ヒルフィガー ジャパン

SAPのアパレル業界向けソリューションである AFS(Apparel and Footwear Solution)をグローバル統合の基盤に活用 。
SAP標準を最大限に活用しながら日本独自要件を実現。

アメリカのプレッピー・ファッションの魅力を世界90カ国以上の人々に届けているトミー ヒルフィガー。
同社は、これまでオランダの本社と各国のグループ企業で異なるシステムを運用していましたが、グループ全体での内部統制を図るため本社システムをグローバルにロールアウトしていくプロジェクトを推進しています。
アジア地域の先陣を切って日本において「SAP AFS」をベースとしたシステムを構築し、2013年9月に運用を開始しました。

グローバルに活動するコンサルティング会社であると同時に、日本のビジネスの独自性を熟知するアビーム。
さらにSAPのプロフェッショナルとして専門知識を有していることも心強いポイントでした。

トミー ヒルフィガー
ヨーロッパ本社 SVP ICT
Mr. Arne Tajlma
  • 課題
    • 本社から日本の経営状況把握が困難
    • 商品コードや商品分類、顧客分類などが異なることによる本社とのコミュニケーション齟齬
    • 本社の求める内部統制基準に対応できないシステム
  • ソリューション
    • グローバルプロジェクトの豊富な経験と実績
    • 日本独自の商習慣を熟知
    • 顧客と一体になり、さまざまな課題を一つひとつ丁 寧に解決していく姿勢
  • 効果
    • 「SAP AFS」ベースの本社システム上でグローバルな業務統合を実現
    • 物流や店舗などの外部システムと連携し、日本独自の複雑な商流や商習慣に対応
    • 経営情報のリアルタイムなグローバル連携
    • グローバルSAP基盤への業務統合による内部統制の強化
    • 商品や顧客を切り口としたグローバルコミュニケー ションの活性化

Story

プロジェクトの背景

グローバルビジネスの統合が必須。
日本を手始めに本社システムのロールアウトを目指す

1985年にニューヨークで創業し、オランダのアムステルダムに本社を置くトミー ヒルフィガーは、現在では世界90カ国以上に1,000 店を超えるストアーを展開するアパレルブランドに成長。現在ではニューヨーク、ロンドン、パリ、ミラノなどの大都市に旗艦店を展開し、日本そしてアジアを今後の重要市場と位置づけて攻勢をかけている。

そこで求められたのが、日本のビジネスのグローバルとの統合である。トミー ヒルフィガーはヨーロッパ本社と各国のグループ企業で異なるシステムを運用してきたが、会計上の内部統制を図るためにも、本社システムをグローバルにロールアウトしたいと考えた。もちろん、日本もこの施策の例外ではない。

トミー ヒルフィガー ジャパンの取締役でありチーフ・フィナンシャル・オフィサーを務める尾郷高志氏は次のように語る。
「これまで日本においては、小規模なASPによるクラウド型のシステ ムを独自に活用してきました。しかしながらヨーロッパ本社にとってみれば、日本のビジネスがどんな状況で推移しているのかをリア ルタイムに把握できず、大きな課題となっていました。そこでグループ企業のシステムを統一するプロジェクトを推進していく中で、アジ ア地域の先陣を切って日本からロールアウトを目指すことになったのです」

アビームの選定理由

欧州と日本の間にまたがる言語や時差、商習慣など “壁”を乗り越えるパートナーシップ

プロジェクトは2011年11月にスタートしたが、最初から大きな困難に直面した。日本とヨーロッパでは言葉はもちろんビジネ スモデルや物流フロー、小売の商習慣などがまったく異なっている。
ヨーロッパ本社で運用しているSAP をそのまま適用するわけにはいかず、当初想定した以上に日本向けのカスタマイズが必要となることが判明した。

2013年3月、このミッションを共に遂行するパートナーとして選定されたのが、アビームコンサルティング(以下、アビーム)である。
トミー ヒルフィガー ヨーロッパ本社 SVP ICTのArne Tajlma 氏は、その経緯を次のように語る。
「アビームはグローバルなコンサルティング会社として、同様なプ ロジェクトでの実績があります。また、アビームはローカルなプレイヤーとしても存在感を発揮しており、日本独自のビジネス環境を熟知しています。さらにSAPのプロフェッショナルとして専門知識を有していることも、心強いポイントでした。ヨーロッパと日本 の間には言葉や時差、ビジネス文化などさまざまな違いがありま すが、我々とアビームとは非常に相性が良く、どんな壁も乗り越えることができると考えました」

課題の解決策

SAP をグローバル統合の基盤に活用して外部システムと連携するインターフェースを用意

今回のプロジェクトでは、標準のSAPのアパレル業界向けソリューションである「 AFS(Apparel and Footwear solut ion)」をグローバル統合の基盤として活用することになった。 ただ、これだけでは独自の商流や商習慣を持った日本のアパレル業界に対応したシステムを構築することができない。
ヨーロッパではすべての業務をSAPでカバーしているのに対し、日本では物流や店舗運営など、さまざまな業務で別システムを利用している。ヨーロッパで稼動しているSAPの単純な適用では対応することができない最大の原因がそこにある。
プロジェクトマネージャーを務めたトミー ヒルフィガー ジャパンのビジネスプランニング&アナリシス&ITのディレクターである加藤崇氏は、次のように語る。
「例えば日本のアパレル業界には『売上仕入契約』といった独自の商習慣があります。また、これまでサードパーティーに委託してきた多くの業務にどう対応するのか。SAPそのものに手を加えることはシステムの複雑化を招き、将来的な拡張や変更を困難に してしまうため、絶対に避けたいことでした。
そこで、日本独自の処理についてはできるだけ外部システム上で実現し、その結果を SAPの標準に合わせた形で、インターフェースを構築するという 方法を取ることにしました」

とはいえ、インターフェースは多岐にわたり、SAP と外部システムの間で、どんな種類のどんな粒度のデータを、どのタイミングでやりとりし、どう整合性をとるのか、詳細な仕様を詰めなければならなかった。
ヨーロッパと日本のビジネスプロセスや業務システムが、それぞれどのような思想に基づいて作られているのか、何度もミーティングを重ね、相互理解を深めながら新システムおよび新業務のデザインを推進していった。
まさにそこが今回のプロジェクトの核心でありアビームによる貢献があった。

ヨーロッパ本社 シニアディレクター ICTのBram Janssen氏はこのように語る。
「私たちが最も重視したのは、グローバルな観点からビジネスプ ロセスについて各国の足並みを揃えることです。ローカルの強みを生かしつつ、ヨーロッパ、アメリカ、日本などすべてのグルー プ会社で、整合性のとれたガバナンスを確立しなければなりません。アビームは優れたファンクショナルエキスパートをアサインし、フェイスツーフェイスのコミュニケーションを通じて、この取り組みをリードしてくれました」

今回のプロジェクトの推進体制は、日本法人に加え、トミー ヒル フィガーが属するPVHグループ本社(米国)、ヨーロッパ本社(オランダ)、香港や米国の各拠点、ドイツやオランダの外部システムベンダーが絡んでおり、また日本でも、POSシステムベンダー、3PL (サードパーティー・ロジスティクス)など多くのベンダー、そしてアビームが参画するというワールドワイドな協業で成り立っている。
言語もタイムゾーンも異なるこれらの企業間で連携をとるのは容易なことではない。そこでアビームは、英語を公用語とするマレーシアの関連会社であるアビームマレーシアを活用。同社のスタッフを設計段階からプロジェクトの主要メンバーに加え、このグローバルでのプロジェクトに対し、開発からその後の運用まで一貫した円滑なコミュニケーションを実現した。

■システム概要図

EC
POS
マーチャンダイシング支援
店舗管理
Local BI
CRM
Global統合マスタ
Global統合発注/購買
倉庫システム
マスタ
購買
在庫管理
店舗配分
販売
管理会計
一般会計
買掛売掛
BW
PI
人事・給与
経費
固定資産
Starling(EAI)
POS-DM
物流
SAPRECC (AFS)
SAP
店舗システム
Globalnon-SAP
Localnon-SAP

導入効果

日本のファイナンスをリアルタイムで把握。グローバルビジネスの透明性を向上

新システムは2013年9月に稼働を開始した。これにより、ヨー ロッパ本社から日本の状況をリアルタイムに把握できるようになった。

Tajlma氏は「ファイナンス関連のデータを迅速に収集できるようになり、グローバルレベルでビジネスの透明性を高めるこ とができました」と評価する。
さらに尾郷氏も「以前は日本から報告した情報をもとに、ヨー ロッパ本社においてグループ連結の業績などを手作業で算出していたのですが、レポーティングの自動化によって大幅な省力化が実現されています。これは内部統制の強化にも役立っています」と語る。

また加藤氏は今回のSAP のロールアウトによって、品番をはじ めとする商品マスタが完全に統合されたことに言及。
「経営サイドの管理視点のみならず、商品や顧客といった切り口からも、グローバルなコミュニケーションを活性化することができました。例えば新商品の開発に関して、日本側から意見やアイデアを発信する といったことが、以前にも増して積極的に行われるようになりまし た」という効果を示す。

従来の日本独自のシステムからSAPをベースとしたグローバル標 準のシステムへの移行という大きな環境変化の中で、エンドユーザーには少なからず戸惑いがあったのも事実であろう。しかし、 新システムによるさまざまなメリットはビジネス現場に肌感覚で伝わり、活用レベルは着実に向上している。

■プロジェクト体制

トミーヒルフィガー4拠点、アビーム2拠点、その他 日本・ドイツ・オーストラリアのベンダーなど世界各国に散在するメンバーでのプロジェクト推進
インフラ運用ベンダー 
トミー ヒルフィガーグローバルマスターチーム
トミー ヒルフィガー本社 
(SAPコンピテンシセンター、権限管理チーム他)
SAP小売機能コンサルタント(外部)
【アビーム マレーシア】
アプリケーションコンサルタント & 開発チーム
トミー ヒルフィガーグローバル商品調達チーム
POSDMコンサルタント(外部)
トミー ヒルフィガー ジャパン
店舗システムベンダー
3PL(外部物流業者)
その他周辺システムベンダー
【アビーム】アプリケーション & ベーシスコンサルタント

今後の展望

サプライチェーンやダイレクトビジネスの強化など、さらなるチャレンジを続けていく

もっとも、今回のプロジェクトは日本のアパレル業界向けにSAPをカスタマイズするという極めて希少な取り組みであり、目標達成までにはまだ道半ばである。

尾郷氏は「POSシステムや3PL(サードパーティー・ロジスティクス)との連携など、期待通りのパフォーマンスを得られていない部分も残っており、今後さらなるチューニングを図っていく必要が あります。同様にシステムのTCO(総所有コスト)低減について も、まだまだ徹底していかなけれはなりません」と話す。

一方で「今回のプロジェクトを経験したことで、日本のビジネスプロセスの独自性を理解することができました。そうした中で、まだ まだ最適化やスリム化を実現していく余地があることも見えてきました」と語るのはJanssen氏だ。
トミー ヒルフィガーはこうした課題を前向きにとらえ、絶え間ない改善を通じてシステムをブラッシュアップしていく考えである。

Tajlma氏は「アビームは当社と一心同体となって課題解決に取 り組んでくれており、かつてない強力なITの推進体制を確立することができました。これからもアビームと共に、サプライチェーンの改善やダイレクトビジネスの強化など、さまざまなチャレンジを続けていきます」と今後を見据えている。

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